2024-02-10 山崎パン地獄のアルバイト3日目

2024-02-10 山崎パン地獄のアルバイト3日目


思い出すままに思いつくままに一発書きの書きなぐりなので、読みにくかったらごめんなさい。

 

 朝5:50に目が覚めた。規則正しくなったもんだ。よる22:00に寝て、朝5:50に起きたので睡眠時間は7.5時間といったところだろう。スマホの朝の目覚まし音は自衛隊の起床ラッパに設定してる。

こんなやつ

https://youtu.be/PfTqhOya5wk?t=37

 昨日から起床時間は6:20に設定してる。夜は寝付きは良かったけどずっと夢見ててなんか苦しんでた気がする。やけに睡眠が短く感じた。実際短かったから当たり前だ。しかし、起きてすぐに全身がものすごい筋肉痛になっていた。こんなに全身全てが筋肉痛になったのなんて高校生以来20年ぶりだった。やはり昨日のスナックでの過酷な全身労働が肉体に傷跡を残していた。体重はかったら昨日とほぼ同じ77.7kgだった。あれ?と思ったら、ぼく丸3日間便秘だ。アルバイト前はきなこ牛乳とか飲んでて毎日快便だったのに。やっぱりパンと肉まんだけでは食物繊維がほとんど無いからだろう。なので行きの車の中でカシューナッツとくるみを40g食べることにした。

 いつも通りに車で向かった。いつもの警察の謎の施設で立番してる警察を見るのを楽しみだった。場所は「かしいはまだんち入り口」という交差点らしい。今日は警察の立番いなかったよ…サボりかよ…毎日立ってる警察を見て「僕も頑張ろう」と勇気をもらってたのに…。

 

 山崎パン工場に入る直前に山崎パン工場を見てふと「学級王ヤマザキ」というアニメのオープニングを思い出して口ずさんでしまった。こういうやつ。

https://www.youtube.com/watch?v=9bp9z6TWSq8

そしたら道端に女性が立っててもろに聞かれてしまった。絶対にやばいやつだと思われたよ。

これ歌いながら山崎パン工場に入ったらきちがいだよ。

 

 山崎パン工場に入った。また朝の体温を測るの忘れたよ…。なのでまた三日前の体温の写真を見せた。毎回バレないかヒヤヒヤしてるが、今日もチラ見しただけでOKもらった。

 7:55に工場内のアルバイトルームに入った。相変わらず貧乏そうな中年の人たちが並んでる。僕もその貧乏な中年の一人なのは言うまでもない。並びながら「ここが社会の底の底、地(ち)の獄(ごく)か。日雇労働者の列に並ぶのにも慣れたもんだ」などと思っていた。

 8:05、アルバイトルームのドアが開いて列が中に入り始めた。僕は必死に「ペストリーは嫌だペストリーは嫌だ」と、フラグとしか思えないようなことを念じ続けた。言われたのは生ケーキだった。フラグにならなくて本当によかった。生ケーキだったら初日に経験があるからマシだ。スナックじゃなかったのも良かった。スナックも地獄だった。

 

 いつも通り洋菓子課の奥の部屋に行って出勤表に記入した。アルバイトの中で僕が一番早く来たらしい。誰も名前書いてなかった。ナッツは便通にすごく効いたようで、工場に到着するとすぐにトイレに駆け込むことになった。食物繊維が豊富なのかな。

 

 今日は食堂の無料のパンがなんかやけに少なかった。昨日、一昨日の1/3しか置いてなかった。種類も全然ないし。タンパク質が多くて低脂質のあんこ系は皆無だった。調理パンは薄皮シリーズのケチャップハンバーグしかなかった。しかたなくそれを2袋食ったよ。まぁ美味しかった。タンパク質の量はまあまあの量だった。一袋12gだったかな。朝食で24gほどのタンパク質を摂取だ。僕は一日に66gのタンパク質を摂取することを目標にしている。

 

 洋菓子課の奥の部屋で軽い朝礼のようなものが始まって係長が何か話している。「何か」というのは、「話しているのは分かるのだがマスクで声がこもってなんと言っているのか全く判別不可能だったからだ…。「これはここにいる誰一人なんて言ってるか理解してないだろ」と思いながら聞いてた。「あうおうおうあうあうおおうおうに注意してください」「あわわわうわうわう。ということでお願いします!」というところだけわかった。肝心な部分が全く見当もつかない。「気にしたら負けだ」と思った。

 

 生ケーキでの僕の担当場所は初日と全く同じだった。係長が「君は鳥やって?鳥したことある?」と僕にしつこく聞いてきて「僕が鳥とはどういうことだ?」と不思議に思って3回くらい聞き直したのだが、係長はいい人で嫌な顔ひとつせずにやさしく「鳥、鳥」とよくわからないことを説明してくれた。係長が「じゃあ鳥やってね」と言って立ち去ってやっとわかった。「鳥」じゃない。「取り(とり)」だ。ベルトコンベアで流れてきた商品の最下流で商品を「取」って番重(ばんじゅう)に並べることを「取り(とり)」と言うのだった。なんか意味不明な用語が多いんだよね。マスクで声がこもって聞き取りにくいし、周りは機械でうるさくてよく聞こえないし。ほかにもしょっちゅう「饅頭、饅頭」という人がいて「生ケーキで饅頭とはどういうことだ?」と思っていたのだが。「饅頭(まんじゅう)」じゃない。「番重(ばんじゅう)」だ。商品を運ぶためのケースのことをバンジュウというのだ。まぎわらしいよ。

 商品を管理するための紙の意味を教えてもらった。バンジュウの横にテープで貼り付けるのだが。

  雪苺娘

  (2)

  182

   検

   品

  14Bー6

 

と手書きで書かれている縦長の紙を貼り付ける。

 

  雪苺娘     ←商品名

  (2)     ←この場合は「2個入りバージョン」という意味

  182     ←182個

   検      ←検品という文字だけ印刷されてる

   品

  14Bー6   ←14つの番重で。番重1つにつき6個入りで。

 

という意味だったらしい。

 

 最初の商品はモンブランだった。2秒で1個が流れてきてたので、午前中だけでざっと4500個を運んだ計算になる。地獄だった。

 

 そういえば時間の設定はおおよそこんな感じのようだ。

 

  午前の仕事  9:00〜11:30  2.5h

  昼休み   11:30〜12:30  1  h

  午後の仕事 12:30〜15:00  2.5h

  トイレ休憩 15:00〜15:10

  続き    15:10〜18:00  3  h

 

 モンブランを取るのがきつすぎて、「今後の人生で僕はモンブランを見るだけで発狂するんじゃないか」と本気で心配になるくらいにしんどかった。

 「もう腰が限界だ…もうだめだ…」と思って時計を見たら、9:50で、まだ50分しか経ってなくて絶望した。本気で「ぼくは今日死ぬだろう」ってその時、本気で思った。

 作業初めて2時間くらいたった11:00くらいに、もう体が限界で色々と工夫を考え始めた。人間、本気でつらくて本気で追い詰められると「なんとかしよう」「なんとか逃れよう」と死ぬ気で色々と工夫や対策を考え始めるんだな。腰とか胴体で動いてはいけない。人体の質量は胴体に集まっているので、体全体で動作するとブレーキの慣性を腰で受け止めることになるようだ。そして質量が大きいものを動かすのは大きなエネルギーが必要で疲れやすい。だから対策としては「胴体は動かさずに腕だけを動かして作業する」べきだ。右手と左手はそれぞれ別々の作業を割り振って一定の動きをさせるようにする。動作はゆったりと動くべし。それをやるようにしたら段々と体が自然に動くようになってきた。そしてとうとう心が限界を超えてしまって「心が無」となった。無我の境地ってやつだ。心を殺して思考を停止させて、意識を希薄にして体だけが自動で動いて作業してくれる。まさに人間の機械だと思った。心が辛すぎて心が死んで思考も停止して体だけがなんとなく動いてくれて意識はほぼ無い。ヤマザキパンはこういう安価な労働力を大量に使用することで成り立ってるのだと身にしみた。僕の精神は三日目の午前で限界を越えてしまって心が壊れてしまった。その後は記憶にない。ただひたすら心を殺して思考を停止させて同じ作業を行い続けていたような気がする。まさに機械だ。

 

 12:35に作業が終わって1時間のお昼休憩となった。僕の大好きな肉まんだ!ヤマザキの中華まんはどれもものすごく美味しくて山崎パン工場に来て大好きになってしまった。肉まんが1つもなかった。肉まんだけじゃない、ピザまんもあんまんもカレーまんも中華まんが皆無だ。パンも通常の1/3くらいしかない。朝と全く同じか減ってるくらいだ。あとから来たおばちゃんが「今日はパンだいぶ少ないわね。タダでもらって文句言うのもあれだけどね」と言っていたのが聞こえた。しかたなくまたいつも通り栄養表を見て少しでもタンパク質が多いやつを選んだ。ランチパックツナマヨ、ランチパックテリヤキチキンマヨをえらんだ。2個で終わるまで保つかなと思ったけど16:00には死ぬほどお腹が空いて後悔した。3つは食べないともたない。作業中にエラー品のクレープをゴミ箱に捨てまくってたんだけど、お腹すきすぎて「ゴミ箱から拾ってむさぼり食いたい」と思ったり、バケツに入ってるクリームの山を見て「頭から突っ込んでむさぼりたい」とか考えてしまってやばかった。16:00以降は体に力が入らなくてフラフラでいつ倒れるかわからなかった。

 

 昼ごはんを10分でさっと食って更衣室に戻って昼寝した。いつも通り更衣室は座り込んで動けなくなってるバイト・派遣の巣窟となっていた。僕はいつもどおり断熱シートを敷いて枕に頭を乗せて脚をリュックに乗せてアイマスクをして大の字になって寝た。モーラスというロキソニンの湿布を持ってきてたのを思い出して腰に貼った。だけど、午後の作業で思い知ったんだけどロキソニンじゃ全く対処できないくらい腰痛がひどかった。昼寝はすごくぐっすり眠れていびきをかきながら40分しっかりめに眠った。

 

 午後は「お餅の中にクリームと苺とスポンジが入った」やつを作る流れに入った。どうやらベルトコンベアは小柄な女性用に低く作ってあるようで前かがみにならないと作業ができなくてまた腰痛が増悪した。小柄な女性にはちょうどいい高さのようだった。僕はと言うと、中腰になろうとしたり、膝を曲げたりいろいろ工夫したのだがどれもうまくいかなくてただ腰痛を我慢しながら作業を行うだけの機械になっていた。ヤマザキの洋菓子生ケーキの作り方はどうやら「商品ごとに流れ作業のやり方と役割」がシステマチックに確立しているようで、商品ごとに行う役割と内容は全く同じらしい。それを知ってるのは社員とかベテランアルバイトの人たちだけなので僕たちみたいな初心者アルバイトや派遣の人は知ってる人の指示に従って役割を与えられてその通りに動くだけだ。「あなたは皿を取って乗っけて。あなたはひっくり返して。あなたはお椀を取って。あなたはお持ちを整えて。あなたは粉砂糖をふりかけて。あなたは蓋を被せて。」みたいなかんじだ。ベルトコンベアの両脇に並んでそれぞれの作業を細かく割り振ってベルトコンベアの流れに従って動き続けるだけだ。それを数千回行って、終わったらそのつど掃除をして、次の商品を作るためにレーンの機械を改造して、また流れ作業の役割を決めて次の商品を作り始める。

 

 ぼくが途中であまりの腰痛で座り込んでいたら係長から「座らないで」と注意されてしまった。なんでみんな平然とやれてるんだろう。こんなに腰痛がつらいのは僕だけなのか?

 

 作業場のはしっこにパソコンの画面があったので見てみたら「ヤマザキ基幹システム」と書かれたウィンドウが出ていた。そこに商品名、値段、生産数、受注数なんかがリストで並んでた。僕らのレーンが作ってた商品がのってて、「受注総数30,000」くらいの数字が書いてあった。そして作った数的なのは800くらい…。これを見てまた「僕は死ぬな」と思った。山崎パン工場に来て「本当に死ぬ」と思ったのはいったい何回目だろう。本気で死ぬと思ったのはすでに50回は越えてると思う。まだ3日しかたってないのに。初日に来てヤマザキパンで社会の洗礼を受けてからもうずいぶん長い時間がたったように感じている。あのときのことがずいぶん昔のように感じている。わずか一昨日のことだったはずなのだが。

 

 午後は完全な人間マシーンになってしまっていた。つまり完全に心が死んでしまって、ただひたすら心を殺して感情を殺して思考を停止させて意識を希薄にして体だけを自動で動かし続けた。体だけが自動で動くのが嘘のようだった。錐体外路系で動いてるんじゃないかと錯覚するほどの自動っぷりだった。ネットの友人で本物の風俗嬢がいるのだが、人間マシーンとして作業しながらその人の話を思い出してた。このように言っていた「性風俗の仕事をしているときは心を殺して仕事をしている。意識だけが幽体離脱している感覚で現実感がなくて自分の体を外から観察しながら体だけが人形みたいに勝手に動いている感覚で病む」と。これと全く同じ絶望的な体験をそのときぼくはしていた。これが社畜っていうやつなのか。いや、これは精神の奴隷かもしれない。ただひたすら心を殺してベルトコンベアに焦らされながら意味不明な作業を延々と強制され続ける。ずっと迫りくる崖から必死に逃げ続けている感覚だった。よく悪夢でなにかから必死に逃げ続けて逃げても逃げても迫り続けるっていう悪夢を見るんだけど、それとそっくりだった。まさに悪夢だった。やりながら気が狂いそうになってて、ずっと気が狂う寸前の状態で心を殺してなんとか精神を保とうとしているという感じだった。

 

 仕事終わってから生ケーキの係長に「腰痛になったりしませんか?腰痛はどうやって対処しましたか?」と聞いてみた。そしたら「自分も若いときはよく腰を痛めてた。痛めたら休むかコルセットをつけるしかない。腰を傷める姿勢にならないように気をつける。」と言われた。やっぱり休むか気をつける程度しかないんだなと思った。

 

 仕事終わった直後に食堂に直行した。死ぬほどお腹空いて倒れそうだった。中華まんは一個もなくて、パンはランチパックのなんとかジャム&クリームとかいう油っこくて甘そうなやつ一種類しかなかった。最悪だった。リュックにデーツとくるみとカシューナッツを非常食で入れてたのを思い出した。帰りの車の中で食った。

 

 全て終わって着替えて帰るために階段を降りた。出入り口のところに手洗い場があるのでそこでメガネと手を洗っていたらふと鏡に写った自分を見て別人のように見えてびっくりした。たった3日間で10歳は老けたかのように老け込んで見えた。そして同時に「修羅場をくぐり抜けてきた益荒男(ますらお)」のようにたくましく見えた。鏡に写った表情はまるでレンジャー訓練をくぐり抜けてきた歴戦の戦士のようにも思えた。とてつもない経験をしたせいなのか。たぶんただの気のせいだと思う。いつものことだ。

 

 あまりに地獄過ぎてこれで時給たったの950円の一日たったの7600円かと思うとまさに奴隷だと思った。安価な労働力の大量搾取って感じだ。適正な給料はおそらく時給1500〜2000円で日給10,000〜15,000円だと感じた。おそらく正社員の給料はそんな感じなんだろう。アルバイトと派遣はそんな感じで搾取してるんだと思う。そしてヤマザキパンはそういったアルバイト・派遣の大量の流入と早期離脱のバランスで保っているんじゃないかな。

 こんなの誰も耐えられないからみんな少し入ってすぐに来なくなる。一日7600円稼ぐのがこんなに過酷でつらくて死にそうなら、「僕は生きるのに向いてないな」とすら思えてきて切ない…。いや、これが最も過酷な仕事なんだと思うことにしよう。これより楽な仕事いくらでもある。これよりきつい仕事はめったいないやろ、たぶん。

 

 帰りの車の運転中に電飾の看板が目に止まった。「ラーメン未来亭」って書かれてる看板ですっごく食べたくてしょうがなかった。だけど、ダイエットで体重減らしたいし、死ぬ思いして苦しんで働いてたったの7600円だったのを思うとお金が勿体ないと思って我慢した。そこで食べたら死ぬ思いして稼いだ金が腹の贅肉に変わるだけだし。でもいつか一回くらいはラーメン食べて帰りたいなと思いながら、リュックに入れてた非常食のデーツとナッツを食べながら運転して家に向かった。