【紹介】30年前に「情報過多とメールの書き方」を予言していた名書(野口 悠紀雄『「超」勉強法』 [1995])
タグ:メール、LINE、書き方、情報伝達、情報過多、情報洪水、Word、ワード、文章、作り方
【背景】
30年も前に「現代で問題となっている情報過多の問題と、情報伝達ためのメール・LINEでの書き方」の重要性について書かれている名書があった。
20年ほど前に僕はこの本を読んでいたはずだがその時は全く理解できていなかった。
情報過多やメール・LINEでの情報伝達の書き方が問題となった現代になってやっと理解できた。
「他の方々へのこの本と著者の凄さを周知するため」「自分自身へのメモのため」に一部引用してこの本と著者の凄さを提示したいと思い引用した。
【引用】
ビジネスマンの国語
◆情報洪水の時代
情報洪水時代に生きる現代のビジネスマンは、きわめて多くの文書に目を通す必要がある。
新聞記事だけでも、毎日フォローしようとすれば、かなりの時間が取られる。書店に行くと、毎日のように新しい書物が出版されている。これらに追いついてゆかないと、時代の進歩に取り残されるような強迫観念に襲われる。
しかし、これらをすべてカバーすることなど、とてもできない。そんなことをしようとしたら、情報のインプット作業だけで、一日の大半の時間がつぶれてしまう。われわれを取り
まく情報量は、適正な水準を越えて過剰になってしまっているのである。この事実を正しく認識することが、まず重要だ。
情報洪水の時代には、「情報を得る」ことは、さほど重要ではない。むしろ、膨大な情報を一覧して重要度を即座に評価し、要らない情報を読まないことのほうが重要なのである。これは、組織のトップにいる人にとっては、とりわけ重要な課題だろう。自分で特別の努力をしなくとも、組織を通じてさまざまな情報が自動的に上がってくるからだ。こうした人たちにとって、2で述べた拾い読みと速読の技術の重要性は、今後ますます高まるだろう。
◆ファクスの書き方
ファクス、パソコン、電子メールなど、最近のオフィスにおける技術進歩は、文書連絡を増やす方向に働いている。これまでのビジネスでは、電話連絡が多かった。しかし、今後は文章による連絡が多くなるはずだ。
ビジネス文書は、「文章」の体裁をしていなくともよい。箇条書きで十分である。むしろ、そのほうが読みやすい場合が多い。原稿依頼のファクス文で、字数、締め切りなどの重要事項が、どこに書いてあるのかわからないことがある。挨拶が丁寧な場合ほど、肝心のことが書いていない。差出人の電話番号やファクス番号が書かれてないものも困る。
電話だと、話し方でごまかせる。しかし、文書では難しい。ファクスで連絡をもらうと、それを読んだだけで、相手方の事務処理システムの全容を判断できる
新人職員を対象とする研修でこれまでは「電話の掛け方」が重要な科目だった。今後は、「ファクスの書き方」が重要になるだろう。
(*電話とファクスの使い分けについては、野口悠紀雄、「続「超」整理法・時間編』、中公新書、1994年を参照。)
◆ワープロで書く技術
ワードプロセッサ(ワープロ)を用いる文章の書き方は、紙にペンで書く場合のそれとは非常に違う。このことは、まだ十分に意識されていない。
最大の違いは、ワープロの強力な編集機能を利用できることだ。このため、最初から順に書いてゆく必要がない。重要なところから書き始めて、書きたしてゆけばよい。その際、細かい表現はあまり気にしないで、メモ程度の文章を書いてゆく。
このようなメモをつぎつぎに付け加え、メモを文章の形に直す。論理的なつながりを考え文章の順序を入れ換える。あるいは、ストーリーを組み直す。最初に書いたメモは、この過程で消されたり変形されたりして、なくなってしまうこともある。
ある程度できたところで、最初から読みながら、文や用語を推敲してゆく。分量がオーバ
したら、重要度が低いところを削ってゆく。このような作業の繰り返しによって、最終的な作品が自然にでき上がってくる。
これまでも、メモをもとに書いてゆくことは可能だった。しかし、パソコンの場合ほど自由自在な編集はできなかった。論述順序の大幅な入れ換えをするには、切り貼りに頼らざるをえない。これを何度も行なうのは難しい。細かい書き込みの修正でも、重なると原稿は読みにくくなる。だから、ある程度まで修正すると、清書という作業が必要になる。自分で清書すると、無駄な時間が取られる。アシスタントを使うとしても、清書の間は作業ができな
パソコンの柔軟な編集機能は、これまでは不可能であった修正の繰り返しによる文章作成を可能にしたのである。これは、まさに「革命的」だ。
この方法には、もう一つの大きなメリットがある。それは、イナーシャ(慣性)が少なくなることだ。「とにかく書き始める」ということができる。これまでのスタイルでは、文章の内容や構成をかなり固めてからでないと、書き始めることができなかった。だから、どうしても「構えて」しまう。原稿用紙を前にして最初の一行を書くのが、大変な作業だったのである。書き出しの部分は、本当は最後に書くほうがよい。パソコンなら、そのような書き方ができる。
個々の文についてもそうである。これまでは、適切な表現を考えながら書く必要があった。
このため、「うまい表現が思い浮かばないために先に進めない」ということが、よくあった。しかし、パソコンの場合には、多少不完全な表現でも、自分だけにしか意味がわからない文でも、とにかく全体のストーリーを書いてしまう。細かい表現は、あとから直してゆけばよいのである。つまり、「八割原則」で文章を書き進められる。全体を書いてしまえば、あとで個々の文を直してゆくのは、容易である。本章の3で述べた「文章を書く三つのルール」は、この段階で初めて必要になる。
以上のように、文章を書いたり構想をねったりする作業は、パソコンの登場によって根本的に変わった。しかし、この技術を用いられない場所が、ただ一つだけある。それは、試験場である。パソコンを持ち込んで答案を書き、通信回線でそれを送るというような状況には、当分の間ならないだろう。したがって、頭の中で考えをまとめて、紙と鉛筆を用いて書くという作業は、少なくとも受験生にとっては、今後しばらくの間、必要である。
【ポイント】ワープロの登場によって、文章の書き方は革命的に変わった。メモを積み重ね、修正を繰り返しつつ文章を書くことができる。
引用元:
野口 悠紀雄『「超」勉強法』 [1995-12]
情報洪水の時代 pp.144-145
ファックスの書き方 pp.145-146
ワープロで書く技術 pp.146-148
参考文献: